ADI-R 日本語版 臨床用ワークショップを受けました
2日間のADI-R日本語版臨床用ワークショップを受けてきました。講師はADOS-2と同様、黒田美保先生らで大変わかりやすい内容でした。
ADI-Rとは
ADI-Rとは自閉症診断面接改訂版(Autism Diagnostic Interview-Revised; ADI-R)のことで、DSM-5という診断基準でいう自閉症スペクトラム症、ICD-10という診断基準でいう広汎性発達障害(アスペルガー障害などを含む)を評価するために開発された養育者面接の半構造化面接ツールです。
そもそも自閉スペクトラム症のアセスメントにおいて、
- 1次スクリーニングとして:乳幼児健診、M-CHAT(1歳半健診でよく用いられる質問紙)、CHAT療育
- 2次スクリーニングとして:AQ、SCQ、CARS、PARSなどの検査
- 3次スクリーニングとして:ADOS、ADI-R、CARS2などの検査
があります。3次スクリーニングの検査とは、確定診断・評価を行う検査のことですが、ADOSもADI-Rもいずれも実施に2時間ほど要します。実施できる施設は殆どありませんが、非常に詳細な評価が可能であり、内容を知るだけでも大変有意義です。
ADI-Rの特徴
ADI-Rの対象年齢は2歳〜成人と幅広いですが、特に4、5歳時の行動を養育者に具体的に思い出してもらい、自閉スペクトラム症の方によくみられるが、定型発達の(発達障害でない)方には殆ど見られない行動に着目して、そのような行動があるか評価します。また、診断のために用いる診断アルゴリズムとは別に、対象者の現在の行動を評価する現在症アルゴリズムがあります。
ADI-Rの内容
プロトコルは93項目あり、
- 背景情報
- 導入質問〔1〕
- 初期発達〔2-8〕
- 言語・その他のスキルの獲得と喪失〔9-28〕
- 言語と意思伝達機能〔29-49〕
- 社会的発達と遊び〔50-66〕
- 興味と行動〔67-79〕
- 行動全般〔80-93〕
- 最終的な初見
という具合に分かれています。
ADI-Rによる自閉スペクトラム症の診断アルゴリズム
上の93項目のうち、42項目を組み合わせて診断アルゴリズムを形成しています。以下の4領域についてスコアを求め、それぞれにカットオフ値をどの程度超えているか評価します。
- 相互的対人関係の質的障害
- 意思伝達の質的異常
- 限定的・反復的・情動的行動障害
- 生後36か月までの顕在化
これらの領域はDSM-4というDSM-5のひとつ前の診断基準に基づいて分類されています。今後DSM-5に即した改訂が行われると思われます。
ADI-Rの限界
講義でも触れられていましたが、ADI-Rによる評価は養育者の症状の気づきや記憶によるもので、恣意的な評価になる可能性があります。ASDを含めた発達障害の診断は、その対象の児童(または成人)の行動観察や発達検査(新版K式、WISC、WAISなど)を行った上で、包括的に実施されることが望ましいです。
参考文献:ADI-R日本語版臨床用オンラインワークショップ 金子総合研究所