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うつ病

 

うつ病の診断について

うつは甘えであるという誤解がいまだに一部では存在しますが、うつ病はれっきとした脳の病気であり、ストレスが積み重なれば誰でもうつ病を発症する可能性があります。うつ病の中でも、特に中核的なうつ病を”大うつ病性障害”といいます。その特徴的な症状を以下に紹介します。これらの症状の中の①強い抑うつ気分、または②興味や喜びの喪失を含む5つ以上の重篤な症状が存在し、2週間以上にわたり持続している時、”大うつ病性障害”と診断します。なお、症状が2から4つの場合に”小うつ病性障害”といい、また、大うつ病性の基準を満たさないうつ病症状が2年以上持続している場合には、”気分変調性障害”と診断します。

(診断書などでは、これらを区別せずに”うつ状態”などと記載することが一般的です。)

うつ病チェック(大うつ病性障害の症状)

①強い抑うつ気分

本人は「気分が落ち込む」「物悲しい」「憂うつ」「絶望感」などの自覚を認める場合が多い。自分の気持ちに気づきにくい人(児童思春期や老年期に多い)は、むしろ「頭痛」「関節痛」「腰痛」「胃部不快感」「肩こり」「便秘」などの身体症状ばかりが目立つ場合があります。

周囲からは、「元気がない」「表情が暗く声に張りがない」といった外見の変化から気づかれます。高齢者ではこうした変化が加齢によるものと考えられて見逃される場合があります。

うつ気分はイライラ感や衝動的な行為、他人に対する批判的、攻撃的な言動などの行動面の問題として現れることがあり、その人の性格の問題だ、などと周囲に誤解されることがあります。

②興味や喜びの喪失

「何をやっても楽しくない」などと感じ、これまで進んで行っていた趣味や娯楽に関心を示さなくなった状態のことです。「好きだったテレビを見なくなった」「本を読まなくなった」など行動をやめる人がいる一方で、「1日中ゲームばかりしているが、実は楽しいという気持ちが一切なくなった」などと行動がエスカレートする人もいます。

③食欲の障害

食欲の減退や体重減少が認められます。児童思春期では成長に伴って期待できる体重増加がみられない場合も含めます。反対に、食欲が増して、食べ過ぎて体重増加を認めることもあります。

④睡眠の障害

不眠や過眠がみられます。「早朝に目が覚め、そこから一睡もできない」”早朝覚醒”が典型的な症状です。それ以外にも、「夜、寝付けない」”入眠困難”や、「途中で何度も目がさめる」”中途覚醒”がみられることもあります。

⑤精神運動の障害(制止または焦燥)

頭が回転するスピードが落ちた状態で、自覚的には「考えがまとまらない」などと感じられることが多いです。周囲から見ると明らかに刺激に対する反応性が低下したり、行動がゆっくりになったり、話し方が遅くなったりします。反対に焦燥感が強くなってじっとしていられず無目的に歩き回るようになることもあります。

⑥疲れやすさ、気力の減退

「意味もなく疲れる」「何をするにも億劫だ」などと感じ、どうしても動かないといけない時以外は横になってぐったりと過ごすようになります。

⑦無価値観、罪悪感 

「自分は価値がない存在だ」と感じたり、ささいな出来事で自分を責めるようになります。

⑧思考力や集中力の低下、決断困難

「頭がまわらなくなった」「人の名前が思い出せなくなった」「集中力がなくなった」「何も決められなくなった」などの自覚を認めます。物忘れが増え、認知症と間違えられることがあります。これを真の認知症と区別する意味で「仮性認知症」と呼びます。

⑨死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図

死について考えが頭から離れなくなり、自殺の手段を考えたりします。実際に自殺企図に至る場合もあり注意が必要です。

うつ病の疫学

うつ病の生涯有病率は約6%です。女性は男性よりも生涯有病率が2倍程度高いことが確認されています。

うつ病になりやすい人の性格とは

うつ病、特に内因性のうつ病(中核的なうつ病のこと)の病前性格として、メランコリー親和型性格という概念があるので紹介します。メランコリー親和型性格とは、秩序を好み、他者に配慮する性格で、徹底して行動をする傾向にあります。このような性格傾向の人は、平常時においては勤勉で真面目であり周囲の人からの評価も高いのですが、環境の変化に対し柔軟に対応することが苦手な場合があり、また他人に配慮しすぎるあまり、他人からの依頼や申し出を断りきれず、多くの仕事を抱え込むことが多いと言われています。

うつ病と間違われやすい病気について

①身体疾患

脳血管疾患(脳卒中)、神経変性疾患(パーキンソン病、ハンチントン病)、代謝疾患(ビタミンB12欠乏症)、内分泌疾患(甲状腺、副甲状腺疾患)、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス)、ウイルス性または他の感染症(肝炎、単球増加症、ヒト免疫不全ウイルス)、ある種の癌(膵癌)など

②物質誘発性気分障害

乱用薬物や処方箋、毒物などの物質によって気分の変調が引き起こされた状態です。処方薬ではステロイドや降圧薬などが気分の変調をひきおこします。またアルコールなども抑うつ気分を引き起こすため注意が必要です。

③認知症

高齢者の場合、うつ病を発症すれば認知症のような物忘れや集中力低下をきたす場合があり、認知症と誤診される場合があります。一方で、認知症を発症することで、うつ症状を発症する場合もあり、医療機関での鑑別が必要です。

④双極性障害(そううつ病)

うつでは、イライラ感が強く易怒的となることもあり、同じように易怒的になる躁状態との鑑別が必要です。その場合には他の症状も包括的に評価して判断する必要があります。また、1週間以上、うつ症状と躁症状が同時にほとんど毎日存在している場合には、躁うつ混合状態と判断します。

⑤発達障害、ADHD(注意欠陥/多動性障害)

うつ状態では注意が散漫になったり我慢する力が弱まったりします。そのためにADHD(注意欠陥/多動性障害)と誤って診断される場合があります。特に悲しみなどの抑うつ気分や興味の喪失が目立たず焦燥感が強い場合にはADHD(注意欠陥/多動性障害)を疑う必要があります。もちろん、ADHDなどの発達障害の方が、学校や会社などの社会生活で失敗体験を繰り返すと二次的にうつ病を発症する場合もあり、その時は両方の診断がつくことになります。そうしたケースではうつ病の治療を行うだけでは不十分であり、発達障害の評価と十分な理解が必要です。

うつになりやすい薬は

うつ症状を認めやすい薬として

  • 経口避妊薬(黄体ホルモン)
  • インターフェロン(肝炎の治療薬)
  • 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)
  • 高血圧治療薬の一部(レセルピン・βブロッカー)

があります。

うつ病の治療について

(※全ての治療が当院で実施できるわけではありません。まずは受診の上ご相談ください。)

①休養をとるための環境づくりの支援

うつ病の治療に最も重要なことは、ご本人と周囲の人が病気を理解し、十分な休養をとることです。それは簡単なことのようですが、実際には病前性格が責任感の強い性格であったりすると周囲がいくら休めといっても本人が休むことを拒否する場合があります。また経済的な理由や、介護など家族関係の理由から本人が実際に休息をとることが難しい場合もあります。当院では、まず病気についての説明を患者さんとご家族に行い、ご本人が休息をとるためにどのような環境づくりをしていくかを共に考え、アドバイスいたします。症状の重篤さに応じ、医師が診断書を記載して休職(休学)をしていただく場合もあります。治療期間は非常に治療が上手くいった場合でも最低6〜8週間は必要です。(患者さんが復帰を急がれる場合は、患者さんの意向を尊重して対応をしていきますが、病状を鑑みてあまりにも無謀であればお止めする場合があります。)職場(学校)復帰に際しては、ご本人の同意が得られれば職場の健康管理医や人事担当者(子どもの場合は学校教員)と相談して、可能な限り馴らしのステップを踏めるように調整します。経済的な問題や、家族関係の問題を抱えていらっしゃる場合には、本人のみならず家族に対し、医師、精神保健福祉士より様々な医療・福祉サービスの活用を提案いたします。

②支持的精神療法

支持的精神療法はうつ病に対する精神療法で基本となるものです。うつ病の症状には、絶望感や、無価値観があり、「もうお終いだ」「何をやってもだめだ」「生きている価値がない」「家族に迷惑をかけている」などと感じやすく、過度に自分を追い詰めてしまいます。そのような自分で自分を苦しめているような心の状態では、いくら体を休めていても心は十分な休養をとれず病気が長引いてしまいます。診察では、まずそのように悲観的な考えを抱く原因(の多く)がうつ病という病気自体であるということを説明し、病気であるからには治療でよくなる性質のものであること理解してもらいます。そして、自分を追い詰めすぎないものの考え方を自然と身につけてもらうような関わりを行っていきます。

③認知行動療法

認知行動療法は人間の感情、情動は認知の影響をうけることから、陥りがちな考え方のパターン(自動思考)に気づいてもらい、認知のあり方に働きかけることによって感情、情動を変化させる精神療法の一方法です。より詳細に説明すると、

誘引となった出来事→偏った認知→不適応的な感情や行動

という連鎖の中で結果的に苦痛を引き起こす症状や、ご本人に不利となる行動が引き起こされると捉え、この連鎖の改善を図るために、学習理論などに基盤を置いて認知・行動の改善を図る技法で、どのような介入を行うかは、連鎖の特徴を分析する行動分析によって導き出されます。

認知行動療法は、急性期治療に対する有効性も確認されていますが、ホームワーク(宿題)を非常に大切にする治療であり、患者さんに実生活で練習してきてもらったホームワークをもとに面接を進めていきます。実際には意欲の非常に低下したうつの患者さんには負担が大きいため、反復性のうつ病の方が、うつ症状が比較的改善した段階で、再発・再燃予防の目的で用いられることが多いです。

④対人関係療法

反復性うつ病、高齢期のうつ病などに治療効果が証明されている精神療法です。現在進行形の対人関係と症状の関連を扱っていく治療法で、対人関係上の以下の4つの問題領域のうち1つまたは2つを選んで話をします。

⒈悲哀(患者にとって重要な人の死など)

2.対人関係上の役割をめぐる不和

3.役割の変化

4.対人関係の欠如(孤独、社会的孤立)

当院では正式な枠組みでの対人関係療法は実施できませんが、対人関係療法の考え方を生かした精神療法は実施しています。

⑤薬物治療

軽症のうつ病では、支持的精神療法や、心理教育を行うことが基本であり、安易な薬物療法や体系化された精神療法は慎むべきとされていますが、中等症以上のうつ病では、抗うつ薬を単剤で十分量、十分期間使用します。初期に限っては抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)を併用してもよいとされている他、眠剤の併用も考慮されますが、いずれも長期投与は推奨されていません。未成年のうつ病に対して十分なエビデンスのある抗うつ薬は現時点ではなく、一部にはSSRIなどに極めてよく反応する方がいるのは事実ですが、副作用の懸念から使用しないで治療をすることがほとんどです。詳細は本ページ下部で説明をしております。

⑥電気けいれん療法 

全身麻酔を行って、呼吸管理後に筋弛緩薬を静脈注射し筋を弛緩させ、けいれんを起こさずに頭部に通電を行う方法です。うつ病では、抗うつ薬が使用できない場合や、抗うつ薬の効果が認められない場合、「昏迷」といって意識があるにもかかわらず意志の発動がない場合、希死念慮が非常に強い場合などに標準的に用いられます。適応を見極めて正しく施行すれば、安全かつ極めて有効な治療です。副作用としては一過性の健忘が出現する場合があります。電気けいれん療法の適応があって治療を望まれる場合は必要に応じて連携病院に紹介をさせていただきます。

⑦反復経頭蓋磁気刺激(r-TMS)療法

抗うつ薬を十分量、十分の期間使用したにも関わらず改善しないうつ病に対して、保険適用された新しい治療法です。効果は抗うつ薬と同程度であり電気けいれん療法ほどの即効性は見られませんが、作用機序が異なるため、薬剤抵抗性のうつ病で、電気けいれん療法を要するほどには緊急を要していない場合に適応と考えられます。必要に応じて連携病院に紹介をさせていただきます。

抗うつ薬の種類はどのように選ばれるか。

抗うつ薬の第一選択薬は、新規抗うつ薬(具体的にはSSRI、SNRI、NaSSA)にすべきであるとガイドラインで定められており、昔からある三環系、四環系抗うつ薬は使用することが極めて稀になりました。その理由は眠気、倦怠感、ふらつき、口の乾き、便秘などの副作用が目立つためです。当院でもガイドラインに則って新規抗うつ薬からの使用を原則としています。しかし、新規抗うつ薬が無効の重症のケース(特に幻覚、妄想があったり、焦燥感が異常に強い場合)には三環系抗うつ薬を使用します。また、眠気や倦怠感などの副作用を逆手にとって、難治性の不眠症の方に少量の三環系、四環系抗うつ薬を使用する場合があります。いずれの抗うつ薬も、副作用に注意して少量から使用し用量を少しずつ増やしますが、抗うつ作用が現れはじめるのは有効用量に達してから、2,3週間程度かかります。また、うつ状態が改善した時点ですぐに薬うつ療法を中止すると再燃することが多く、この点についてはエビデンスが集積しており、継続投与群の再燃率は15%であるのに対し、プラセボ群(抗うつ薬中止群)では50%に再燃が見られます。そのため、症状が改善してから4〜5か月間(反復性の場合はさらに長期間)は服薬を継続すべきであるとされています。

代表的なSSRIと副作用

SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害薬のことで、脳内の細胞外セロトニン濃度を上昇させることで、抗うつ作用を示すとされています。SSRIの開発は、その副作用の少なさから、うつ病の薬物療法に多大な影響を与えました。SSRIは抗うつ作用のみならず、抗不安作用も有していることから、強迫性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などにも使用されるようになりました。わが国で使用されているSSRIを紹介します。

エスシタロプラム(商品名レクサプロ)

SSRIの中では薬物相互作用が少ないとされ、うつ病、うつ状態に対して適応となっています。副作用が少なく、用法も1日1回とSSRIの中ではシンプルであるため飲み忘れにくく、用量調節もしやすいことから非常によく用いられています。主な副作用は、吐き気、眠気、頭痛、口の乾き、めまい、倦怠感、下痢、QT延長(心電図異常)です。

セルトラリン(商品名ジェイゾロフト)

この薬も薬物相互作用が少ないとされており、用法も1日1回であることからよく用いられています。日本ではうつ病、うつ状態の他、パニック障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に適応があり、海外では強迫性障害、月経前気分障害の治療薬としても使用されています。主な副作用は、吐き気、眠気、口の乾き、頭痛、下痢、めまいがあります。

フルボキサミン(商品名ルボックス、デプロメール)

日本で初めて上市されたSSRIであり、抗うつ薬として使用されるのみならず、強迫性障害や社会不安障害の治療によく用いられます。SSRIとしては用量調節の幅が広く、マイルドに効く印象で単剤では副作用が少ないです。一方、肝臓のチトクロームP450(CYP450)という酵素に対して阻害作用を有する事から、他の薬の血中濃度を上げる事があり、多剤の併用時には薬物相互作用には一定の注意が必要です。

パロキセチン(商品名パキシル)

新規抗うつ薬の中では副作用も比較的強いですが、最強のSSRIとして知られ効果がもっとも強い部類の薬です。うつ病、うつ状態の他、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害などに広く用いられます。副作用は、吐き気、眠気、口の乾き、めまい、便秘などがあります。(他の SSRIでも起こりうることですが)、急に中断するとめまい、知覚障害、睡眠障害、不安、焦燥感、震え、発汗、頭痛、下痢などの離脱症状が出現することがあり、減薬は段階的にゆっくりと行います。

代表的なSNRIと副作用

SNRIは選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のことで、脳内の細胞外セロトニン・ノルアドレナリンの濃度を上昇させることで、抗うつ作用を示すとされています。

デュロキセチン(商品名サインバルタ)

うつ病、うつ状態に適応があり、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton depression scale:HAM-D)でも、プラセボとの効果比較で、抑うつ気分、仕事と活動、入眠障害、罪業感、精神的不安で優れた結果となりました。さらに疼痛にたいする効果も有意な結果となったため、糖尿病性神経障害に伴う疼痛や、線維筋痛症に伴う疼痛にも適応となっています。海外では、腹圧性尿失禁や、全般性不安障害に用いられる場合もあります。主な副作用は、吐き気、下痢、便秘、食欲不振などの消化器症状、眠気、口の乾き、頭痛、不眠、倦怠感、めまいなどがあります。

ベンラファキシン(商品名イフェクサーSR)

デュロキセチン同様、うつ病、うつ状態に適応があり、うつ症状の改善に有効な薬です。また低容量では選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のような特徴を持つことから、欧米では不安に対する効果が認められており、社会不安障害、全般性不安障害、パニック障害にも用いられています。主な副作用は吐き気、腹部不快感、眠気、めまい、口の乾き、頭痛です。デュロキセチンも同様ですが、肝機能障害のある患者では慎重に増量する必要があります。

ミルナシプラン(商品名トレドミン、ミルナシプラン)

この薬は日本で初めて上市されたSNRIであり、うつ病、うつ状態に適応があります。マイルドに効くという定評があります。用法が1日2回から3回と多いですが、肝薬物代謝酵素CYP450系の代謝を受けないため、肝機能障害の患者さんに対してはSNRIの中では相対的に用いやすいです。主な副作用に、口の乾き、吐き気、便秘、排尿障害があります。

代表的なNaSSAと副作用

NaSSAはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬のことで、α2受容体を遮断することでノルアドレナリン作動性神経系を増強し、α1受容体を介してセロトニン作動性神経系の発火を促し、脳内の細胞外セロトニン・ノルアドレナリンの濃度を上昇させることで、抗うつ作用を示すとされています。

ミルタザピン(商品名リフレックス、レメロン)

うつ病の第一選択薬の一つとしてうつ病、うつ状態に適応があり、うつ病における症状のうち、特に不眠、不安、イライラ感や食欲不振に対して有効です。投与して1〜2週間という短期間で抗うつ効果が発現すること、他の抗鬱薬で問題となりやすい投与初期の吐き気、食欲不振などの副作用が少なく安全性が高いことが知られています。主な副作用は眠気、口の乾き、便秘、肝機能障害がありますが、副作用のほとんどが投与初期に発現し、ほとんどが軽度であり、もっとも副作用の少ない薬の一つと評価されています。SNSなどでは、太るということで、よく話題になるミルタザピンですがべての人で体重増加がみられるわけではありません。

その他の新規抗うつ薬

ボルチオキセチン(商品名トリンテックス)

比較的新しい新規抗うつ薬でうつ病、うつ状態に適応があります。SNRI同様、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用があります。さらに、セロトニン神経系に対しては、再取り込み阻害作用に加え、セロトニン作動性の作用も併せもつという点で、新規抗うつ薬として分類されることがあります。副作用は吐き気、眠気、頭痛があります。海外では認知機能障害を伴ううつ病に高いエビデンスがあるとされています。

抗うつ薬開始直後に注意すべき「セロトニン症候群」とは

セロトニン症候群とは、抗うつ薬を開始(増量)した直後(24時間以内)に起こる副作用で下記のような症状があります。

  • 精神症状:不安、焦燥、せん妄、不穏、見当識障害
  • 自律神経症状:発汗、頻脈、発熱、悪寒、高血圧、嘔吐、下痢
  • 神経筋症状:手の震え、ミオクローヌス(脚などのピクつき)、筋強剛

一過性の軽症例から、致死的な重症例まで様々です。不安、焦燥などの精神症状のみの場合は、アクティベーション・シンドロームと行って一過性の症状であることが多いですが、明らかな体の症状(自律神経症状、神経筋症状)や、著しい精神症状が出現した場合にはセロトニン症候群を疑います。いずれにしてもかかりつけ医に相談してください。

治ったら抗うつ薬は自分でやめても良い?

抗うつ薬は再発予防効果が示されています。自己判断で中断せず、かかりつけ医と相談して、時期を相談し計画的に減らしていきましょう。

初回のうつ病エピソードの場合

初回のうつ病の方が、再発する確率は50〜60%といわれています。再発予防の目的で寛解(症状がなくなること)後、最低6か月間はお薬を続けましょう。メタ解析(多くの研究)によって、プラセボ(偽薬)を内服している人と比較して、抗うつ薬を継続している人は6か月、1年、2年経過後も再燃の頻度が減っていることがわかっています。

2回目以降のうつ病エピソードの場合

2度のうつ病エピソードを経験した方が再発する確率は70%、3度めのうつ病エピソードを経験した方が再発する確率は90%といわれていますから、寛解後(症状がなくなること)後、最低2年間はお薬の継続が必要です。

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