メニュー

ナルコレプシー

ナルコレプシーとは

睡眠調節障害を主な特徴とする病気で、思春期から青年期(〜30代)までに好発し、居眠り病と呼ばれます。発症に男女差は特にありません。日本人の情動脱力発作を伴うナルコレプシーの有病率は、600人に1人と報告されています。

ナルコレプシー(Narcolepsy)という名前の由来は

ナルコ(Narco)は「眠り」、レプシー(Lepsie)は「発作」という意味です。日中に激しい眠気が襲う症状から1880年にフランスの医師ジェリノー(Gelineau)によって名付けられました。

ナルコレプシーの症状【ナルコレプシーチェック】

  • 日中の強い眠気、繰り返す居眠り(睡眠発作)

最も基本的な症状は日中の強い眠気繰り返す居眠りです。居眠りは通常10分から20分で、目が覚めた直後には眠気がなくなり、すっきりと爽快感があります。しかし、2〜3時間もたてば再度眠気に襲われます。ナルコレプシーの方の強烈な眠気を睡眠発作といいます。睡眠発作は普通の人であれば緊張してまず居眠りなどしない状況でもやってきます。例えば大事な試験や、商談中、上司との会話中、食事中、さらに歩いている最中にも、急に耐えられない眠気が襲ってきて気がつくと眠り込んでしまいます。またてんかんなどと異なり、他の人が呼び掛けたり揺り動かしたりといったわずかな刺激で容易に目が覚め、寝ぼけることもなく速やかに正常な状態に戻ることも特徴です。こうした症状が、周囲の人から「怠けている」と誤解を生む原因となってしまいます。

  • 大笑いしたら、体の力が抜ける(情動脱力発作)

興奮して喜怒哀楽などの感情が高まったとき、特に大笑いしたときに体の力が突然抜けてしまいます。(※ナルコレプシーの方の中にはこの症状がないこともあります。)発作時の症状は、瞼が下がって目を開けていられなくなったり、頬や顎が緩んだり、呂律が回らなくなるなどがあります。これを情動脱力発作といいますが、周囲の人にほとんど気づかれない程度の方から、ガクッと頭が前に垂れたり、膝が折れたりして周囲に気づかれる方、場合によっては地面に倒れ込むほどの重度の方もいます。発作の持続時間は通常1〜2秒で、長くても数分程度ですぐ回復します。

  • 夜中によく目が覚める(夜間熟眠障害)

ナルコレプシーの方は、普通寝つきは5分以内と非常に早いです。しかし、一夜を通して眠り続けることはあまりありません。夜中に何度も目を覚ましてしまい、健常者に比べて質の良い睡眠が取れません。

  • 寝入りばなに生々しい夢を見る(入眠時幻覚)

入眠時幻覚というのは、寝入りばなに、本当に体験しているかのような非常に生々しく鮮明な夢を見ることです。例えば、寝室の入り口や窓から何者かが忍び込んで襲いかかってきたり、蛇や爬虫類、得体のしれない化物がやってきて、体にのしかかってきたりするように感じられたりします。

  • 金縛りになる(睡眠麻痺)

このように恐ろしい夢を見て、強い恐怖や不安を感じ、なんとかその状況から逃げ出そうとするのですが、手足が麻痺して動かなくなり、助けを呼ぼうにも声が出せなくなってしまう金縛りになります。入眠時幻覚と睡眠麻痺は、眠りがレム睡眠から始まることと密接な関係があります。

  • 歩きながら寝てしまう(自動症、自動行動)

強い眠気を我慢していて、いつの間にか脳が眠りに入っても体はその直前にやっていた動作や、普段行っていることを無意識に実行してしまうことがあります。それを「自動症」「自動行動」といいます。例えば「ノートをきちんと書いていたつもりが、あとで見返すと全然違うことを書いてあった」「家へ帰る曲がり道を通り過ぎて遠くまで行ってしまった」「知らないうちに買い物をしていた」などです。あとで、なんでそんなことをしていたんだろう、と考えても全く覚えていない、といったことが怒ります。これらの症状の時は、眠りと行っても浅い眠りであるため、周りの人が呼び掛けたり触ったりすると簡単に目が覚めます。

ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーになりやすい体質に、ストレスなどの環境因子が重なって発症すると考えられています。頭部外傷、手術、大出血、睡眠不足、ウイルス感染など、大きな身体的、社会的ストレスが加わった直後に発症する場合があります。私たちの体の状態に応じて覚醒状態を調節するオレキシンという物質の量が、ナルコレプシーの方では異常に少なく、髄液中のオレキシン濃度が測定できないほど低くなっています。これは脳の視床下部にあるオレキシン産生細胞の働きの低下が関係していると言われています。

ナルコレプシーは遺伝する?

ナルコレプシーそのものは遺伝しませんが、ナルコレプシーの患者では、白血球の血液型であるヒト白血球抗原(HLA)の遺伝子のDR15とDR1が陽性です。また、日本人のナルコレプシーの患者ではDR-2が陽性であることがわかっています。

ナルコレプシーに関連するレム睡眠、ノンレム睡眠とは?

レム(REM)睡眠とは、閉じたまぶたの下で、目玉が素早くキョロキョロ動くこと(急速眼球運動;Rapid Eye Movement)を特徴とする浅い眠りで、私たちはREM睡眠の間に夢を見ます。手足が小さくピクピク動いたり、寝言をいうこともあります。ノンレム睡眠はレム睡眠でないという意味で、PSG(ポリソムノグラフィー検査)という睡眠中に頭に電極をくっつけて脳波などを調べる検査の所見で、4段階に分類されます。健康な人の睡眠は、うとうととしたかなり浅い眠りから始まり、これを第1段階といいます。次にやや浅い眠り(第2段階)、やや深い眠り(第3段階)、そして最も深い眠り(第4段階)を経て、身体が深く眠っているにもかかわらず脳は「かなり浅い眠り」の時と同じ状態になるレム睡眠に移る、といったサイクルを繰り返します。このサイクルが1セットで、このセットを一晩のうちに3、4回繰り返します。PSG(ポリソムノグラフィー検査)で睡眠の状況を調べたところ、一般の人は寝入ってからレム睡眠が始まるまでの時間(レム潜時という)が1時間以上かかるのに対し、ナルコレプシーの方はレム睡眠が始まるまでの時間が5分以内などと極端に短いです。つまり寝入ったと思ったら「いきなり」レム睡眠から始まるのです。入眠時幻覚と睡眠麻痺(金縛り)も、眠りがレム睡眠から始まることと密接に関係しています。身体は休んでいるのに、脳はまだ半ば目覚めている状態で、脳が動けと命令しても手足は反応することができず「金縛り」と感じるのです。

ナルコレプシーの診断(ICSD-3)

ナルコレプシーは主に情動脱力発作の有無によって、Type1とType2に別れます。それぞれの診断基準をいかに示します。

ナルコレプシー Type1

基準AとBが満たされることが必要
  A: 3か月以上の毎日耐え難い眠気や居眠りがある
  B: 下記のいずれかを満たす
    (1) 情動脱力発作が存在、かつMSLT(反復睡眠潜時検査)で基準を満たす
    (2) 脳脊髄液オレキシン値≦110pg/mL, <正常平均の1/3

ナルコレプシー Type2  

基準A-Eのすべてが満たされることが必要
  A: 3か月以上の毎日耐え難い眠気や居眠りがある
  B: MSLT(反復睡眠潜時検査)で基準を満たす
  C: 情動脱力発作が存在しない
  D: 脳脊髄液オレキシン値が異常低値 または未測定
  E: 他の原因で過眠症状やMSLT所見をよりよく説明できない

ナルコレプシーと間違われやすい病気

特発性過眠症

ナルコレプシーと同様に強い日中の眠気を訴えますが、ナルコレプシーとは違い、特徴的な情動脱力発作や入眠時幻覚などの症状はありません。また短時間の仮眠では眠気が解消しないのも異なる点です。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に10秒以上持続する呼吸停止が繰り返し起こり、夜間の睡眠減少と昼間の眠気、または過眠を認める病気です。多くは中年以降で発症します。

ナルコレプシーの治療

非薬物療法としては、夜間睡眠の確保や規則正しい生活習慣の維持が大切です。また、短時間(10〜30分程度)の計画的な昼寝が有効です。

ナルコレプシーの薬とその副作用とは

日中の眠気を緩和するために精神刺激薬という覚醒を高める薬を用います。精神刺激薬は、脳の大脳皮質に届いて刺激し覚醒水準を高めます。精神刺激薬は交感神経刺激作用があり、内服開始時には副作用として動悸、口の渇き、胃不快感、食欲抑制、頭痛、不安、焦燥感などを認めることがあります。

モダフィニル(商品名モディオダール)

モダフィニルは他の精神刺激薬と比較し依存性が少なく、副作用もマイルドです。最近、適応症に、条件付きで睡眠時無呼吸症候群にも使用が承認されました。ただ、効果が実感できる方と、そうでない方のギャップが大きい薬で、1錠(100mg)でもものすごく効いたと言われる方がいる一方で、最大量の3錠(300mg)飲んでも全然効かないという方もいらっしゃいます。効かない方の多くはナルコレプシー1型などで、重度のEDS(日中の眠気)がある方です。(軽症の過眠症群の方や、CPAP使用している睡眠時無呼吸症候群にはある程度効く印象です。)中には自己判断で勝手に用法以上内服している方もいらっしゃいますが、用法以上に内服されることは絶対にお勧めできません。そのような経緯もあってか、最近、処方が厳密に管理されるようになってきました。

メチルフェニデート(商品名リタリン)

強い覚醒作用を持つお薬ですが、大量に長期間使用されると精神依存が形成されるため、近年乱用者の問題が社会問題となり、2008年より処方可能な医療機関、医師、薬局が登録制となりました。ただリタリンでしか治療効果がなく、この薬のおかげで辛うじて社会生活を送られている患者さんもおられます。

(当院では処方できません。診察の結果、このお薬が必要と考えられる場合、高次の睡眠学会認定の病院に紹介をさせていただきます。)

ペモリン(商品名ベタナミン)

有用なお薬ですが、劇症肝炎のリスクがあり、アメリカなど他国では使用が禁止されるなど、一癖あるお薬です。

マジンドール(商品名サノレックス)

覚醒作用がありますが、日本では眠気治療に保険適応がなく、やせ薬としてのみ使用されています。リタリン同様依存性が問題として言われているお薬です。

情動脱力発作(笑ったら力が抜ける)の治療

情動脱力発作は、程度が激しい場合には高所からの落下など、一歩間違えれば危険な事故につながる非常に危険な症状です。残念ながら毎年事故で命を落とされる方がいらっしゃいます。情動脱力発作の治療に三環系抗うつ薬やSNRI、SNRIという種類の抗うつ薬が用いられる事があります。

情動脱力発作の治療に用いられる、三環系抗うつ薬
  • Protriptyline(日本未承認)10-60mg/日
  • クロミプラミン(アナフラニール)・イミプラミン(トフラニール)25-150mg/日
情動脱力発作の治療に用いられる、SNRI
  • ベンラファキシン(イフェクサー)37.5mg〜150mg/日(最大で300mg/日)
  • デュロキセチン(サインバルタ)20-40mg/日(最大で60mg/日)
  • アトモキセチン(ストラテラ)10-60mg/日(最大で80mg/日)
情動脱力発作の治療に用いられる、SSRI
  • Fluoxetine(日本未承認)パロキセチン(パキシル)20-60mg/日

 

参照:

AASM (アメリカ睡眠医学会)ガイドライン

NPO法人 日本ナルコレプシー協会(なるこ会)HP

https://narukokai.or.jp/index.html

なるこ会は日本のナルコレプシーの患者会です。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME