恐怖症
限局性恐怖症(特異的恐怖症)とは
- 限局性恐怖症(特異的恐怖症・単一恐怖症)とはいわゆる「〇〇恐怖症」のことで、不安障害(不安神経症)の一つです。特定のもの、環境や状況に対して出現する過度の恐怖を感じる病気です。通常10歳以前に発症します。(遅くても成人期の初期に発症する場合が一般的です。)多くは発症のきっかけがはっきりしませんが、動物に襲われた、などの体験が契機になる場合もあります。わが国での12か月有病率は3%程度であり、非常に頻度の高い病気です。女性では精神疾患の中で最も発症頻度が高く、男性では物質関連障害についで2番目に高いです。男女比は女性が男性の2倍となっています。
限局性恐怖症(特異的恐怖症)の症状と診断
- 恐怖の対象、または状況に対する著しい恐怖や不安が存在し、それに遭遇すると直ちに不安や恐怖が引き起こされます。パニック発作が起こることもあります。
- そのため、これらの対象や状況に遭遇することを積極的に避ける(回避)か、もしくは強い苦悩を抱えながら耐え忍ばれます。
- この恐怖や不安は、これらの対象や状況に対して実際に生じる危険性から考えて不釣り合いなほど重篤です。
- 症状の持続時間は概ね6か月以上続きます。
- 恐怖や不安は著しい苦痛や、社会的・職業的な困難を生じさせます。
限局性恐怖症(特異的恐怖症)の分類と例
恐怖の対象や状況の違いによって動物型、自然環境型、血液・注射・負傷型、状況型、その他の型の5つに分類されます。
動物型
イヌ、ヘビ、トカゲ、ゴキブリ など
自然環境型
水、火、雷、嵐、雨、暗闇など
血液・注射・負傷型
血液、怪我をすること、注射など尖っているもの(先端恐怖)、点滴などの医療処置
状況型
飛行機、高い場所(高所恐怖)、エレベーター
その他の型
着ぐるみ、大きな音、窒息すること(窒息恐怖)、嘔吐すること(嘔吐恐怖)
特に出現頻度が高いものは、動物、嵐、高い場所、病気、けが及び死です。
限局性恐怖症(特異的恐怖症)は治る?
経過は波動的で慢性的に続くことが多いですが、小児期発症の場合は自然寛解することがあります。
限局性恐怖症の治療
暴露療法(行動療法)
まず、リラックスするための筋弛緩法、呼吸法をを練習するなどした上で、不安や恐怖を感じる対象や状況に敢えて挑戦し慣れていく方法です。
系統的脱感作法
最もよく行われる方法で、不安や恐怖のヒエラルキー表を作成して、最弱の刺激から暴露し(脱感作)、次に少し強い刺激に暴露する、といった具合に少しずつ慣れていきます。例えば高所恐怖の方が、まずは2階、その次に3階といった具合に少しずつ高所で過ごすことに慣れていきます。
フラッディング(flooding)法
不安や恐怖の対象に集中的に暴露する方法です。耐えられるだけ長く恐怖刺激に曝されることで、ついにはもはやそれを感じない段階まで到達することを目指します。例えば高所恐怖の方が、いきなり20階建てのビルの屋上まで上がり、そこに可能な限りとどまるといった具合です。
薬物療法
対症的な治療になりますが、耐えがたい不安や恐怖、パニック発作に対し、抗不安薬やβアドレナリン受容体拮抗薬の有効性が確認されています。