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広場恐怖症

アテネにある古代アゴラ(agora)のヘファイストス宮殿

広場恐怖症とは

広場恐怖症の「広場」とはギリシャ語の"agora"に由来し”公共の広場”を指します。この由来からわかるように、元来、広場恐怖症とは、文字通り「広々とした空間に対して恐怖を抱く病気」を表していました。ところが、現代のDSM-5という診断基準では、もう少し「広場」の状況について拡大して解釈しており、「自分を制御できなくなるような症状(尿意や便意など)やパニック様症状が起こった時に、逃げることが困難である、または助けが得られないかもしれない状況」において、不合理かつ顕著な恐怖または不安を抱く病気と特徴づけられています。

広場恐怖症の診断(DSM-5)

DSM-5という現代の診断基準では、具体的に以下の5つの場面を取り上げ、そのうち2つ以上の場面で強い恐怖または不安を持続的に感じることと定義しています。

  1. 公共交通機関の利用(自動車、バス、列車、船、飛行機など)
  2. 広い場所にいること(駐車場、市場、橋)
  3. 囲まれた場所にいること(店、劇場、映画館)
  4. 列に並ぶ、または群衆の中にいる
  5. 家の外にひとりでいること
  • パニック様の症状や、その他の耐えられない、または当惑する症状(失禁の恐れなど)が起きた時に脱出が困難だったり助けを求められない状況に恐怖を感じ、これらの状況を避ける様になります。(積極的な回避)
  • その恐怖、不安、または回避は持続的で(典型的には6か月以上)、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的または他の重要な領域における機能障害を引き起こします。(例:外出が困難になるなど)

広場恐怖症の原因

広場恐怖症の遺伝率は61%であり、様々な恐怖症のうちもっとも遺伝負因が大きいとされています。小児期の否定的な出来事(分離など)や、襲われる、奪われるといったストレスの強い出来事は、広場恐怖症の発症に関連すると言われています。中枢神経刺激薬であるカフェインの中毒、または中枢神経抑制薬(アルコール、バルビツール酸系薬剤)からの離脱は広場恐怖の症状を増悪させる可能性があり、避けたほうがよいでしょう。

広場恐怖症の疫学

3〜5割の人では、広場恐怖の前にパニック発作あるいはパニック障害(パニック症)を発症します。パニック障害(パニック症)が先行しない場合の平均発症年齢は25〜29歳ですが、全体の発症年齢は17歳です。本症の典型的な経過としては、持続性・慢性で、完全な寛解は残念ながらまれです。広場恐怖症の人の1/3以上は、完全に家にしばられ、外で働くことができません。

広場恐怖症を公表した芸能人(有名人)

近年、病気を公表してくださった有名人が出てきてくださり少しずつ広場恐怖症の理解がひろがってきました。

  • 永野将司選手 - 2019年に広場恐怖症を公表したプロ野球選手
  • 菅沼菜々選手- 2020年に広場恐怖症を公表したプロゴルファー

広場恐怖に合併しやすい心の病気は

広場恐怖症を持つ人の大多数は他の精神疾患を合併しています。特に頻度が高い疾患は、他の不安症群(パニック障害、社交不安障害、限局性恐怖症)、うつ病、心的外傷後ストレス障害およびアルコール使用障害です。

広場恐怖症の治療と薬

広場恐怖症の治療と薬は、パニック障害(パニック症)の治療と薬に準じたものとなります。認知行動療法(認知再構成法・曝露反応妨害法)が有効である他、リラクゼーション法や薬物治療(SSRIや抗不安薬)を用います。詳細はパニック障害(パニック症)のページの下部をご覧ください。

(※全ての治療が当院で実施できるわけではありません。まずは受診の上ご相談ください。)

広場恐怖症の人が向いている仕事は

広場恐怖症は短期間で克服しようとするのではなく、時間をかけて少しずつ不安を減らしていくことが肝要です。まずは自宅から近隣の職場(できれば徒歩圏内)で、無理なく自分のペースでできる内容の仕事を探しましょう。(暴露反応妨害法に取り組むのは仕事以外の余暇の時間にしましょう。)最近は新型コロナウイルスの流行によりテレワークで自宅から出ずにできる仕事が増えており、広場恐怖症の人にとっては働きやすい環境が図らずも少しずつ増えつつあります。

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