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強迫症(強迫性障害)

強迫症(強迫性障害)の症状

強迫症(強迫性障害)(OCD)とは、反復する「強迫観念」または、「強迫行為」、もしくはその両方が存在する疾患です。かつては強迫神経症と呼ばれました。

  • 「強迫観念」とは、反復的で持続的な思考、衝動、または心像で、侵入的で好まないものとして体験され、ほとんどの人に強い不安や苦痛を引き起こします。例えば、「コンロの火を消し忘れたのではないか」「お金を触ってウイルスに感染したのではないか」という観念が繰り返しこころに浮かんで、「火を消したはずだ」「お金を触ったあと手を洗ったので感染するはずがない」とアタマではわかっていても、「火事になったらどうしよう。」「病気になるのではないか」と不安がつのります。
  • 「強迫行為」とは、不安・苦痛を中和するために、過剰に反復的に行われる実際の行動や、心の中の行為です。例えば、「コンロが消えていることを何度も確認する。」「手を何時間も洗い続ける」などです。心の中の行為とは「心の中で言葉を繰り返す。」「心の中で祈る」「心の中で数字を数える」などがあります。

強迫観念(考え)の内容の種類

  • 汚染:「汚れてしまったのではないか」
  • 対称:「(配列・数などが)ぴったりでない」
  • 禁断的(宗教的・性的タブー・攻撃的):「大変なことをしてしまうのではないか」
  • 加害「誰かを傷つけてしまうのではないか」(※子どもに多い)

強迫症状は成人患者では一生を通じ同じものであることが多いが、子どもは変動しやすい。

強迫症(強迫性障害)の診断(DSM-5)

また、DSM-5では以下の1または2のどちらかを満たすとしています。

  1. 強迫観念または強迫行為に1日1時間以上費やされている
  2. 社会的、職業的、または他の重要な他の領域における機能の障害を引き起こしている

強迫性障害の人は、基本的に自分の行為が過度で不合理であることを自覚しており、他の人に気づかれないように隠す傾向にあります。但し、DSM-5では、病識の程度によって、下記の3類型に分類しています。

  • 病識が十分、またはおおむね十分

 例:「確認しなくてもたぶん家は全焼しない」または「全焼するかもしれないししないかもしれない」

  • 病識が不十分

 例:「30回確認しなければ家はたぶん全焼するだろう」 

  • 病識が欠如した・妄想的な信念を伴う(4%未満)

 例:「30回確認しなければ、家は必ず全焼する」

強迫症(強迫性障害)の原因

脳の大脳基底核(特に尾状核)や前頭前野という部位の眼窩面(orbitofrontal cortex;OFC)という部位の過活動状態と言われています。より詳細に述べると、OFC→(線条体腹側部にある)側坐核→淡蒼球腹側部→視床背内側部→OFCという回路をOCDループと呼びますが、OFCが過剰に興奮すると、側坐核も過剰興奮し、そこから抑制線維で淡蒼球腹側部が過剰抑制され、視床背内側部では逆に抑制が外れてしまいます。そのため、視床背内側部での異常興奮が再びOFCに伝わり、さらにOFCの興奮をエスカレートさせてしまう、という悪循環になります。その結果、無意識の情報処理がうまく働かず、意識的な情報処理の過程に過度に頼ることとなり、行動が強迫的となると言われています。

強迫症(強迫性障害)の疫学

1年有病率は0.5〜2.1%、生涯有病率は2.5%といわれています。小児期では10〜12歳に発症のピークがあり、10歳未満の発症も稀ではありません。一方で35歳以降の発症は珍しいとされています。小児期では男児の罹患が多く、成人では女性が若干多いと言われています。強迫性障害の治療がされない場合、通常は慢性的によくなったり悪くなったりを繰り返し、寛解をするのは2割程度です。

強迫症(強迫性障害)の治療

薬物治療と認知行動療法が第一選択です。

(※全ての治療が当院で実施できるわけではありません。まずは受診の上ご相談ください。)

認知行動療法

認知行動療法のなかでも最もよく用いられるのは暴露反応妨害法です。具体的には「不安階層表」という表を作った上で、本人にとって不安が軽い刺激から段階的に暴露していき、強迫行為を行わないように我慢していきます。例えば、汚染恐怖のある方であれば「汚染している」という強迫観念に打ち克って、「自室のドアノブを触った後、手を洗わないように我慢する」などの心理的ハードルの低い課題から馴れていき、徐々に「電車のつり革を触り、手を洗わないように我慢する」などと心理的ハードルの高い課題に取り組んでいきます。このような課題を続けることで、感じる不安の強さが少しずつ弱くなり、強迫観念も弱まっていきます。暴露反応妨害法は、このようにとても苦痛を伴う治療であり、何らかの理由で取り組むことが難しい場合は、思考中断法という手法を用いることもあります。強迫観念が頭の中に出てきたらすぐに思考を中断する練習をしていき、最終的には思い浮かぶ前に排除できるようにするという手法です。

強迫症(強迫性障害)の薬の種類

  • 薬物治療の第一選択はSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬として使われる薬です。SSRIは即効性に欠け、有効用量を飲み始めてから効果が出てくるまでに最短でも2週間から3週間、最長で8週間を要します。それを聞くと即効性のある抗不安薬の方が優れているように思われるかもしれませんが、SSRIは効き始めると十分に効果が持続し、依存性も低いため第一選択として推奨されています。少なくとも1年間かそれ以上は治療を継続すべきだとされています。SSRIの副作用として最も多いのは吐き気、下痢などの消化器症状になります。
  • 通常はうつ病よりも効果の発現に時間がかかり、10〜12週かかります
  • 治療を2年間継続した患者の再燃率は、治療を中止した患者の半分以下(25-40% vs 80%)です。少なくとも1年間は治療を続けるべきとされています。
  • 低用量のSSRIに、抗精神病薬を用いると増強療法として最も効果があります。
  • SSRIにミルタザピン(商品名リフレックス)、ラモトリギン(商品名ラミクタール)、トピラマート(商品名トピナ)も増強療法として有効と言われています。
  • 日本では適用外使用になりますが、クロミプラミン(商品名アナフラニール)という三環系抗うつ薬も強迫性障害に有効であり、複数のSSRIが無効の場合にはクロミプラミンを使用します。

強迫症(強迫性障害)でよく用いられる SSRIと副作用

フルボキサミン(商品名ルボックス、デプロメール)

日本で初めて上市されたSSRIであり、強迫性障害に使用されるのみならず、うつ病や社会不安障害の治療によく用いられます。SSRIとしては用量調節の幅が広く、マイルドに効く印象で単剤では副作用が少ないです。一方、多剤の併用時には薬物相互作用には一定の注意が必要であり、当院で使用する場合は、当院と連携の薬局で、ダブルチェックを行っております。

パロキセチン(商品名パキシル)

新規抗うつ薬の中では副作用も比較的強いですが、最強のSSRIとして知られ効果がもっとも強い部類の薬です。うつ病、うつ状態の他、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、外傷後ストレス障害などに広く用いられます。強迫性障害では40mg以上の高用量が必要になることがあります。副作用は、吐き気、眠気、口の乾き、めまい、便秘などがあります。(他の SSRIでも起こりうることですが)、急に中断するとめまい、知覚障害、睡眠障害、不安、焦燥感、震え、発汗、頭痛、下痢などの離脱症状が出現することがあり、減薬は段階的にゆっくりと行います。

セルトラリン(商品名ジェイゾロフト) ※日本では適用外使用です。

この薬も薬物相互作用が少ないとされており、用法も1日1回であることからよく用いられています。日本ではうつ病、うつ状態の他、パニック障害、外傷後ストレス障害(PTSD)に適応があり、海外では強迫性障害、月経前気分障害の治療薬としても使用されています。強迫性障害に対しては、抗うつ治療の用量下限付近で有効となることが多い。主な副作用は、吐き気、眠気、口の乾き、頭痛、下痢、めまいがあります。

SSRIはいつまで飲んだら良い?

SSRIは症状が改善してからも通常1〜2年間は継続し、その後症状の再燃・増悪に注意しながら、1、2か月に10〜25%程度ならの割合で減量していくことが一般的です。急激な中断は再発のリスクを高めることがわかっています。

強迫症(強迫性障害)の方への接し方

強迫性障害はしばしばご家族を巻き込み、家族問題を引き起こします。代表的な懸念事項としては、儀式を巡る主導権争い(儀式に家族が従うように要求する)や、性的・攻撃的強迫観念への対処の難しさ、強迫症状の扱い方などがあります。ご家族は「自分の対応が本人の強迫症を発症させ、より悪化させているのではないか。」と悩まれている場合が非常に多いです。まず、強迫症(強迫性障害)の発症に対して、家族が自分を責める必要はないこと、をお伝えする必要があります。次に、ご家族は本人の強迫行為に対して注目することを減らし、罰を無くした上で、他の肯定的な行動を褒めるなどして強化するように意識することが重要です。その時に、ご家族の各々(例えば父と母)が本人に対し別々の対応を取ることのないように、対応について話し合い意見を一致させましょう。

強迫症(強迫性障害)を描いた映画

恋愛小説家(1997)

監督 James. L. Brooks 

主な出演者 Jack Nicholson(アカデミー賞主演男優賞),  Helen Hunt(アカデミー賞主演女優賞)

潔癖で毒舌の変人小説家(強迫性障害)がなじみのウェイトレスや隣人との交流を通して、人なみの愛を知るまでを描いたラブロマンス 

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