むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)
- むずむず脚症候群とは
- むずむず脚症候群の症状
- むずむず脚症候群の原因と分類
- むずむず脚症候群と検査とは?
- むずむず脚症候群と合併しやすい病気は?
- むずむず脚症候群の治療
- むずむず脚症候群の薬
- むずむず脚症候群と漢方
- むずむず脚症候群は赤ちゃんに起こる?
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは
- むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは、入眠の時などに脚に耐えがたい不快な感覚が起こり、じっとしていられない状態が慢性的に起こる病気です。下肢静止不能症候群と呼ばれることもあります。脚を叩いたりさすったりすると不快感が軽くなることが特徴です。
- 日本における有病率は3%程度と考えられており頻度の高い病気です。特に女性に多く、発症は10代から20代が多いですが、子どもからご高齢の方までどの年代でも発症することがあり、男女問わず加齢により有病率が上がります。女性は出産の回数が多いほど、本疾患の有病率がますことがわかっています。一般にゆっくりと病態は進行します。
- 周期性四肢運動障害という別の病気を合併する頻度がとても高いことがわかっており類縁の病気と考えられています。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の症状
国際診断基準では、以下の4つの特徴が規程されています。
- 足の異常感覚が原因で脚を動かしたい、という強い欲求がある
- その異常感覚は安静で始まる、または安静で増悪する
- 運動によって改善する
- 日中より夕方から夜間に増悪する
自覚的な症状の例としては、「下肢の不快感(むずむず感、火照り感、何かが這っている感覚など)」「じっとしていられない」「寝付けない」などがあります。また、周期性四肢運動障害(足のピクツキ)を合併している方では、途中で目が覚める「中途覚醒」があったり、「朝起きにくく」「強い日中の眠気を感じる」場合があります。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の原因と分類
- むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)として、ドパミン(神経伝達物質の一つ)作動性の経路の障害と、鉄代謝異常が注目されていますが、はっきりとはわかっていません。
- 鉄という栄養素の欠乏によって、神経伝達物質のドパミン産生がうまくいかなくなると、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)が引き起こされることがわかっています。実際、鉄欠乏性貧血の方や、一時的な鉄欠乏が起こりやすい、慢性腎不全の方(特に人工透析中の方)、妊娠中の方で頻度が高いことがわかっています。そのほかに、SSRIなどの抗うつ薬や抗精神病薬など薬剤性にむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)が起こる場合もあります。このように明らかな原因の病気があって起こる場合を、二次性むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)といい、2割程度の方が該当するといわれています。
- 遺伝的、体質的にドパミン(神経伝達物質の一つ)作動性の経路の障害が起こりやすく、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)になりやすい方がいます。一説には遺伝素因が6割程度あると言われており、実際に家族歴が5〜9割の方にみられ、原因の遺伝子変異も複数発見されています。そのような場合を特発性むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)と呼び、8割程度の方が該当するといわれています。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の検査とは?
「むずむず感」の強さを評価する検査は現時点で残念ながらありませんが、自覚的な症状の重症度を調べる目的でIRLS重症度スケールというスケールを用いる場合が場合があります。また、鉄という栄養素の欠乏があるかを計測するために血液検査を行います。また貧血所見がない場合でも、体内の貯蔵鉄の指標である血清フェリチン濃度が低値であれば、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)となりやすいことがわかっているためその値を計測します。また上述のように、自覚症状がなくても周期性四肢運動障害の合併が7割という高頻度でみられる(8割という報告もあります)ため、疑わしい場合には終夜睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)検査を実施します。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)と合併しやすい病気は?
7割程度の方は、周期性四肢運動障害という別の病気を合併することがわかっています。また、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)自体が、高血圧や、心循環系疾患発症の危険因子であることがわかっており、高頻度に合併します。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の治療
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の治療の目標は、自覚症状をゼロにすることでなく、自覚症状を改善させそれに伴う不眠を軽減し、患者さんの日中の活動や生活の質を向上させることです。まず、症状を増悪させる可能性のある薬物や嗜好品(コーヒーに含まれるカフェインなど)を中止してもらいます。また、必ず上述の二次性むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)であるかどうかを検査によって調べ、二次性のものであれば、原因疾患の治療を進めます。二次性でもこれで改善しない場合や、特発性(一次性)の場合は以下に示す治療を行います。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の薬
ドパミンアゴニスト、L-DOPA/DCI製剤などのドパミン(症状の原因となる神経伝達物質)関連のお薬や、自覚症状を緩和さセルベンゾジアゼピン系薬物、一部のけいれんのお薬、オピオイド、鉄剤などが用いられます。
- ガバペンエナカルビル(商品名レグテクト)は中等度から重症のむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)に使用されます。抗けいれん薬のガバペンチンのプロドラッグで、欧米でもむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の治療に用いられています。
- ロチゴチン(商品名ニュープロ、ニュープロパッチ)は、ドパミン作動性の経皮吸収型製剤であり、中等度から重症の本症候群に用いられます。同様の機序の経口の別のお薬も用いられることがあります。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)と漢方
残念ながらむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)に対する有効性が示されている漢方薬はありませんが、不眠症に用いられる漢方(抑肝散など)が治療に用いられることがあります。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は赤ちゃんに起こる?
確かに赤ちゃんでも本疾患は発症するといわれています。しかし、赤ちゃんが脚をこすり合わせる動作は、正常な発達の段階でも一時的に起こることがあります。月齢が進むと自然と治まることが多く、多くの場合経過観察となりますが、ご心配であれば病院にご相談ください。