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自閉症診断観察検査 第2版(ADOS-2)臨床研修会に参加し修了しました

[2021.01.14]

よこはま発達相談室主催で1月10日、11日の二日間の日程で行われた自閉症診断観察検査(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition;以下ADOS-2)臨床研修会に参加し修了しました。

ADOS-2とは

1999年にアメリカで開発された自閉スペクトラム症 (ASD)の疑いのある方(推奨年齢12か月〜成人)を対象に、意思伝達、相互的対人関係、遊び/想像力、限定的・反復的行動な ど、ASD特徴を評価する面接です。対象者の表出性言語水準および 生活年齢にあわせ、もっとも適切なモジュールを5つの中から選択・実施します。したがって、発語のない 乳幼児から、知的な遅れのない成人まで、さまざまな発達水準と言語水準の方を幅広く評価することが 可能です。「ADOS-2日本語版」の翻訳者である黒田美保先生が自ら講師として登壇されました。文化的違いに配慮し、一語一語、議論されながら翻訳を進められた翻訳者の根気と熱意に脱帽しました。

ADOS-2では

検査者が対象者の発達年齢に合わせて5つのモジュールから使用するものを選択します。

(あとから訂正されることもあります。)5つのモジュールは以下の通りです。

  • モジュールT(乳幼児モジュール):無言語〜二語文(推奨年齢12〜30カ月)
  • モジュール1 :無言語〜二語文レベル(推奨年齢31カ月以上)
  • モジュール2:三語文で話すレベル
  • モジュール3:流暢に話すレベル(子ども・青年)
  • モジュール4:流暢に話すレベル(青年・成人)

1時間程度の行動観察の結果、数値的に以下の5領域が評価できます。

  • A:言語と意思伝達
  • B:相互的対人関係
  • C:遊び/想像力
  • D:常同行動と限定的興味
  • E:他の異常行動

モジュール1〜4では、ADOS診断分類として自閉症自閉症スペクトラム非自閉症を判定することができ、それらはDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)という日本で精神科医が用いる診断に対応しています。ただし、ADOS-2は現症(現在の症状)の評価としては非常に精度の高いものですが、以前からのASD特性は評価しないため、厳密にはADOS-2だけで医学的診断がつくわけではわりません。

ADOS-2はアメリカでは医療機関のみならず学校など教育現場で広く用いられているそうです。

知的障害のないASDのかたは、中高生(場合によっては大学生以上)まで見逃されるがちですので、もしこのような面接が普及すれば見逃しが減り、早くから医療につないだり、学校現場でソーシャルスキルトレーニングを実施することができるので理想的だと思いました。

ADOS-2は決して「検査者が抱いた印象」で評価をするのではありません。

客観性、再現性を保つために、くどいほど厳正な評価基準を用いており、それに則って丁寧に評価をしていきます。その評価の手順は、心理という文系的なものというよりは、むしろ数学や理科などの理系的なもののように感じられました。将来的には(ADOS-2で評価する)対人相互性などの「the人間」的な要素を、AmazonのアレクサのようなAIが行う時代がくるのかもしれないという予感を感じました。

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