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不眠症

不眠症の診断について

不眠症(Insomnia)とは、不眠を主訴とする睡眠障害群のことで、眠る機会(睡眠に割り当てられた十分な時間)や環境(安全性、照度、静寂性、快適性)が適切であるにもかかわらず、主観的に睡眠の開始と持続、安定性、あるいは質に持続的な障害を認め、なんらかの日中の障害をきたすことです。

不眠症の症状について

不眠症の典型的な夜間の訴えは以下のようなものです。

  1. 寝付けない(入眠困難)…寝付くまでの時間が30分以上
  2. 途中で目がさめる…入眠後の覚醒時間が30分以上
  3. 朝早く目がさめる
  4. 適切な時間に就床することを拒む

不眠症の典型的な日中の障害(症状)は以下のようなものです。

  1. 疲労、または倦怠感
  2. 注意力、集中力、記憶力の低下
  3. 社会生活上、家庭生活上、職業生活上の機能障害
  4. 気分がすぐれない、いらいら
  5. 日中の眠気
  6. 行動の問題(例:過活動、衝動性、攻撃性)
  7. やる気、気力、自発性の低下
  8. 過失や事故を起こしやすい
  9. 眠ることについて心配し、不満を抱いている

その他、筋緊張、動悸、あるいは頭痛といった身体症状をみとめる場合もあります。

睡眠薬を常用しているため、不眠症(不眠障害)の診断基準を満たさない場合でも、睡眠薬なしでは眠れないことが臨床的に認められている場合や、睡眠薬なしでは眠れないかもしれないという不安を訴えている場合には、不眠症(不眠障害)の診断とします。

また、子どもの不眠症は成人の不眠症とは別の現れ方をする場合があります。

不眠の原因とは?

不眠の原因は様々ですが、原因は以下のような種類が考えられます。

  • 睡眠リズムに乱れがある

昼夜逆転や時差ぼけなど睡眠リズムに乱れがあると自律神経が乱れ、不眠症の原因となります。

  • 睡眠不足がある

成人でも睡眠時間が6時間を切ると半数に居眠りが出現するとされています。睡眠不足は、昼寝や、休日に一日中寝ているなど不規則な睡眠習慣を招き、眠りを浅くします。

  • 寝床で過ごす時間が長すぎる

必要な睡眠時間より長時間横になる習慣があると、睡眠も細切れとなり、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害を招きます。大人は7.5時間以上寝床で過ごさないようにしましょう。

  • 痛み、かゆみ、呼吸困難、頻尿などがある

基礎疾患の治療が優先されます。頻尿に対しては、寝る前の水分摂取を控え目にすることが有効な場合があります。

  • 寝酒の習慣がある

寝る前のアルコール摂取は、寝つきがよくなっても睡眠の質を悪化させ、中途覚醒を増やします。

  • 夕方以降にカフェインの摂取がある

コーヒー、緑茶などカフェイン含有飲料は覚醒作用を持つため、睡眠の質を悪化させる場合があります。

  • 寝室環境に問題がある

騒音があったり、不適切な室温、湿度、照度がある場合、不眠の原因となります。

  • 睡眠時無呼吸症候群がある

本人は睡眠中の呼吸停止に気づかず、強い日中の眠気や、倦怠感、中途覚醒、熟眠感の欠如の自覚症状があります。睡眠薬は無呼吸を悪化させるので注意が必要です。

  • むずむず脚症候群がある

むずむず脚症候群とは、夕方以降〜寝る前に、下肢を中心として不快感を自覚し、体を動かさずにはいられないというのが特徴の病気です。入眠困難、中途覚醒の原因となります。

  • 周期性四肢運動障害(PLMD)がある

睡眠中に、自覚されない周期的な下肢の収縮があり、睡眠の質を悪化させ中途覚醒の原因となります。60歳以上の成人の約3割にみられ、自覚症状がないことが多いです。

  • うつ状態である

うつ状態は、入眠困難や早朝覚醒、熟眠障害など睡眠の様々な問題を引き起こします。うつ病のページをご参照ください。

不眠症の分類について

ICSD-3(睡眠障害国際分類)では、上記症状が十分に当てはまり(かつその他の睡眠障害とは診断されず)少なくとも週に3回、3か月間認められる場合、慢性不眠障害と診断します。それ以下の場合は短期不眠障害と診断します。

旧版のICSD-2では、誘引なく起こる不眠症を原発性不眠症と呼び、以下のような亜型が挙げられていました。現在でもそれらの呼称を使用する場合があるので列挙します。

精神生理性不眠症

これといった原因がないにもかかわらず不眠症が続いてしまう慢性不眠症のことです。覚醒レベルの上昇と学習された睡眠妨害的連想(「眠れなかったらどうしよう」「7時間眠れなかったら大変だ」など)が特徴で、結果として不眠症の訴えを生じます。この型の不眠症をもつと思われる方は、自宅のいつもの睡眠環境で寝ようと努力しても困難ですが、新しい睡眠環境や寝ようと努力しない時には容易に寝付くことが多いです。睡眠に対する過度のとらわれと心配を示し、認知的覚醒と身体的覚醒が高水準となります。

特発性不眠症

脳内の睡眠系か覚醒系、あるいは両方における遺伝的に規定された先天的な異常が原因の不眠とされています。乳児期、小児期のはじめに潜行的に発症し、まとまった寛解期間(症状がなくなる期間)がなく、長年に渡り睡眠困難を訴えることが特徴です。この病態に一致する遺伝的マーカーや神経病理は特定されていません。

逆説性不眠症(睡眠状態誤認)

不安やとらわれなどの心の状態から、実際の睡眠の量を過小評価してしまうことです。客観的検査(睡眠ポリグラフ検査)を実施し睡眠時間が6時間以上かつ睡眠効率85%以上が確認された上で、一睡もしていないと訴えたり、客観的な睡眠指標と主観的な睡眠指標に著しい乖離が認められる場合に診断する。

その他、小児期の行動性不眠症は、子どもの不眠症のページをご覧ください。

不眠症の合併症について

慢性疼痛性障害や、胃食道逆流症(GERD)、皮膚掻痒症(かゆみ)などの疾患は、睡眠・覚醒困難の原因となります。反対に、不眠症が重度の場合、身体疾患や精神疾患、その他の睡眠障害を招きます。不眠症は未治療のままでは、これらの並存する疾患の予後(転帰)を悪化させます。不眠症の治療は、睡眠の問題のみならず、並存する病気の予後(転帰)を改善します。

不眠症の治療について

(※全ての治療が当院で実施できるわけではありません。まずは受診の上ご相談ください。)

睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患や合併症がある場合はそちらの治療が優先して行います。それを行ってもなお不眠の訴えが続く場合には以下のような治療を行います。

睡眠衛生指導

適切な日中の過ごし方、睡眠習慣や、睡眠環境について、アドバイスさせていただきます。

漸進的筋弛緩法

米国の医師のEdmund Jacobsonによって開発されたリラクゼーション法です。筋肉は緊張させてから力を抜くことで脱力しやすくなるためこれを利用し、特定の筋肉を意図的に強く緊張させ、その後一気に力を抜いて筋肉が緩む感覚を味わうことで、緊張状態からリラックスさせる方法を体感的に習得する方法です。

①リラックスできる環境を準備します。部屋の明かりは薄暗くし、アロマやヒーリングミュージックなどをかけてもよいかもしれません。寝転んでも、椅子に座っても構いません

②まずは腹式呼吸で呼吸を行いましょう。おへその下あたりに手をあて、息をゆっくり吐き切り、その後お腹を膨らますように鼻から息を吸いこみます。これを数回繰り返します。

③片手から漸進的筋弛緩法をはじめます。親指を中にいれてこぶしを握ります。この時も呼吸を意識してください。息を吸いながら力を入れ、吐くときに力を抜きましょう力を抜くときに、筋肉が緩んで緊張がほどけていく感覚をゆっくりと感じてください。これを数回繰り返します。

⑤手が終わったら、腕(力コブを作る)、肩(肩をすぼめる)、背中(肩甲骨をよせる)、首(左右にひねる)、顔(全体をすぼめる)、お腹(手を当てて押し返す)、太もも(足を延ばす)、足(そらす)とすすめていきます。

⑥最後に全身をチェックして、緊張が残っていないかを確認します。

刺激制御療法

漸進的筋弛緩法と並んで有効性の高い技法です。以下を徹底して実践してもらいます。

  1. 眠気があるときのみ入床する
  2. 寝床は睡眠にのみ使用する
  3. 寝床に入って15分程度眠れなければ離床する
  4. 起床時刻を一定にする(昨晩眠れなかったとしても)
  5. 日中は昼寝をしない

睡眠制限療法

不眠が続くと、必要以上に体を休めようとして床上時間が長くなりがちですが、その結果、睡眠効率が低下して悪循環となります。睡眠制限療法は床上時間を制限することで睡眠効率を高め、不眠の改善を目指す治療です。以下の手順を実践します。

  1. 睡眠日誌から得られた情報に基づいて、1〜2週間の平均睡眠時間を算出します。
  2. 算出した平均睡眠時間を床上時間とし、それに基づいて就床-起床時刻を決めます(5時間以下の場合は5時間とます。)
  3. 1週間の睡眠効率(総睡眠時間/総床上時間×100)を算出します。
  4. 睡眠効率が90%以上の場合は、床上時間を15分増やし、85%未満であれば15分減らします。
  5. 上記方法を1週間ごとに繰り返します。

認知行動療法(CBT-I)

睡眠日誌に毎日の睡眠状態を記録してもらい、その記録に基づいて睡眠の問題の維持要因となっているその人の考え方の「くせ」を明らかにし、問題を改善するための新しい習慣の獲得を目指す心理療法です。問題の定式化を行い、それに基づいた治療計画を立て、ホームワークを設定し日常生活で実践してもらいます。現在は、刺激制御療法や睡眠制限療法と併せて睡眠スケジュール法と呼ぶことが一般的です。

不眠症の薬について

睡眠薬とは【歴史から学ぶ】についてのページをご参照ください。

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